渋谷を歩いていたら、知っていた場所が変わっていた。
宮下公園。渋谷のあの、細長い公園。

正面から見ると、建物というよりインフラのように見えた。
MIYASHITA PARKと書かれた大きなサイン。その下に、長い階段。人が連なって上っていく。緑の蔓がアーチに絡まっている。
入口から入ると、長い廊下が続いていた。

昼の光が、外階段を斜めに照らしていた。アーチの鉄骨の向こうに緑が見える。この階段を上ると、屋上公園に出る。
商業フロアを歩いた。

ストリートブランドが並んでいた。NEW ERA、KITH、Alexander。天井は配管が露出したまま。仕上げを剥いだような質感。
渋谷のストリートカルチャーが、ここに集まっている。

エスカレーターで上の階に移動した。
ガラス張りの店舗、コンクリートの床、壁面にAdidasのアートが描かれている。外から見ると建物が一本の帯のように見えるのに、内部は幾層にも分かれている。
屋上に出た。

空が広かった。
スターバックスが一棟、小さな建物として屋上に建っている。その向こうに白い大きなアーチ。さらに向こうにTOWER RECORDSの黄色い看板が見える。雨上がりの地面に光が映っていた。
公園が、ここにある。

金属フェンスに囲まれたコートが並んでいた。
サッカー、バスケット、多目的グラウンド。屋上にスポーツ施設がある。フェンスの向こうに渋谷の夜景が広がる。
ここは地上何メートルにあるのだろう、と思いながら歩いた。
なぜ渋谷に、この形の建物が生まれたのか。
宮下公園はもともと地面にあった。渋谷区が長年管理してきた、細長い線形の公園だ。老朽化していて、再整備の議論が続いていた。
三井不動産が事業者として入り、商業施設と公園を立体的に組み合わせる計画になった。公園は消えるのではなく、上に移る。その下に商業施設が入る。
渋谷という消費の街で、公園という無料の場所をどう存在させるか。その答えが「屋上に上げる」だった。

建物の端を歩くと、ルイ・ヴィトンが入っていた。
金色のモノグラムのファサード。外壁が宝飾品のように仕上げられている。その隣に外部階段が伸びている。
高価なものと、日常のものが同じ建物にある。
屋上から階段で降りて、もう一度外に出た。
この建物には「地面」がない。公園も、商業施設も、全部浮いている。地面に根を下ろした公園とは違うものだ。
それが悪いとは思わなかった。ただ、屋上で風に当たりながら、ここに来る人は「公園に来た」と思っているのだろうか、と少し考えた。
答えは出ないまま、渋谷駅の方向へ歩いた。



